2024年01月30日 / 2024年01月30日 更新

相続放棄を考えているなか、遺品整理に着手してよいのかわからない。そんな疑問を抱く方も少なくないでしょう。遺品整理に着手してしまうと相続放棄ができなくなってしまう場合があるため、相続放棄を検討している際の遺品整理はリスクの高い行為です。

そこで今回は、相続放棄を検討している場合の遺品整理についてどう対応すべきか解説していきます。相続放棄の注意点を具体例を交えて紹介していくので、相続放棄を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

遺品整理とは

遺品整理とは、故人が使っていた遺品を遺族が整理することを指します。物品の整理はもちろん、故人の財産の確認や相続関連の手続き等も遺品整理の作業内容に含まれます。故人に思いを馳せつつ思い出の品を整理する時間であるため、故人との別れに揺れる心の整理の時間ともいえるでしょう。

ただし、相続放棄を検討している場合に遺品整理を行うと故人の財産を処分したと判断され、相続放棄ができなくなってしまう可能性があります。相続放棄を検討している場合には、遺品整理を行わないのが無難でしょう。

内部リンク: 遺品整理とは?着手する際の注意点や業者の利用についてご紹介します!

相続放棄とは

相続放棄したら遺品整理はどうする?

相続放棄とは、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がないことを指します。相続では資産的な価値のある遺品や財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続の対象となります。

それゆえ、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合には、相続放棄を選択する場合も少なくありません。相続放棄を行いたい場合には、相続の開始を知った時点から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述する必要があります。

相続放棄のメリット

相続放棄のメリットとしては、借金を引き継がずに済むということ、相続手続きの手間を削減できることが挙げられます。先述の通り、相続放棄を行えばマイナスの財産を受け継ぐ必要はないため、借金を背負う必要がなくなるのは大きなメリットです。

加えて、相続を行う際は、遺言書の検認や遺産分割で書類の準備や手続きが必要になります。遺族間で相続の内容がまとまらない場合には、相続争いやトラブルに発展する可能性もあるでしょう。このような相続にかかる手間を削減できる点も、相続放棄を選択するメリットといえます。

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリットとしては、一切の相続ができなくなる事に加え、一度認められてしまうと撤回できないという点が挙げられます。相続放棄を選択した場合、プラス、マイナス双方の財産を一括で放棄することになり、プラスの財産だけを相続するといった選択はできません。

また、一度決定した相続放棄は撤回することができず、後から財産が発見された場合でも相続を希望することはできません。事前にプラス、マイナス両方の財産についてしっかり調査し、遺族間の確認も入念に行ったうえで相続放棄を決定しましょう。

相続放棄したい場合に確認すべき事項

ここでは、相続放棄を検討している場合に確認すべき事項を解説していきます。相続放棄は一度決定すると取り返しがつかないため、事前の確認を入念に行うことが大切です。

遺品整理をすると相続放棄ができなくなる可能性がある

前述の通り、遺品整理をしてしまうと相続放棄はできなくなる可能性がある点に注意しましょう。

民法では、相続人が相続財産を処分した場合には相続の単純承認をしたものとみなされます。単純承認とは故人の相続財産をすべて相続することを指し、遺品整理で相続の対象となる遺品を整理すると、単純承認を認めたと判断される可能性があるのです。

処分すると単純承認と認められてしまう遺品は基本的に資産価値のあるものであるため、写真や手紙といった資産価値がないものは整理しても問題ありません。ただし、誤って資産価値のあるものを処分してしまわないよう、相続放棄が確定するまで遺品整理を行わないのが無難といえるでしょう。

相続財産の消費や隠匿をした場合も相続放棄が認められない

相続財産を消費したり、隠匿したりしていた場合にも、相続放棄は認められません。これらが発覚した場合には、相続放棄をした後でも相続放棄が無効になり、単純承認をしたとみなされます。

また、該当する遺品が相続財産であることを知ったうえで、財産目録への記載を行わなかった場合も相続財産の隠匿に含まれます。このケースでも単純承認をしたものとみなされるため注意しましょう。

相続放棄後も遺品の管理義務が発生する場合がある

相続放棄をした場合も遺品の管理義務が発生する場合がある点にも注意が必要です。相続放棄をした場合でも、相続人に相続財産を引き渡すまでは遺品の管理を行うことになります。

例えば、故人が居住していた住まいが空き家となった場合には、近隣住民に迷惑がかからないよう清掃や補修を行う必要があります。管理義務を怠ってトラブルが発生してしまった場合、相続放棄をしていても責任を問われてしまう可能性があるため注意しましょう。

相続放棄の取り消しは不可

相続放棄のデメリットとして紹介したとおり、相続放棄は一度認められると取り消しはできません。相続放棄の撤回が認められてしまうと、他の相続人の相続分に影響を及ぼすため認められないこととなっています。

相続放棄が承認された後にプラスの財産が発見された、といった場合も撤回はできないため、事前調査は徹底的に行いましょう。

相続放棄を希望する場合に行うべきでない遺品整理の具体例

相続放棄したら遺品整理はどうする?

ここでは、相続放棄を希望する場合に行うべきでない遺品整理の具体例を紹介します。これらの行為を行うと相続財産の処分と判断される可能性が高いため、着手したい場合は事前に専門家に相談することをおすすめします。

遺品の廃棄・処分

相続放棄を検討している場合、遺品の廃棄・処分は控えましょう。資産価値のある遺品を処分したと判断された場合は、単純承認を認めたものとして扱われてしまいます。

資産価値のない遺品については処分しても相続放棄が認められますが、家具、家電なども財産に含まれる場合があり、資産価値を有するか否かの判別を誤る可能性もあります。基本的には遺品の処分は行わず、どうしても処分したい場合には専門の業者や弁護士に資産価値の判断を行ってもらったうえで決定するようにすると安心です。

故人の預貯金に関連する行為

故人の預貯金に関連する行為に関しても、行わない方が無難です。故人名義の預貯金の引き出しはもちろん、名義変更や解約といった行為も相続財産の処分と判断される場合があります。

もし預貯金を引き出してしまった場合、その財産を使用していない場合には処分したと判断されない場合があります。事情があって引き出した場合は、自身の財産と混ざらないよう区別して管理し、故人の口座に入金し直すのがよいでしょう。

賃貸住宅の解約

相続放棄を検討している場合には、故人が住んでいた賃貸住宅の解約も控えましょう。賃貸を解約した場合、故人が有していた賃借権を処分したという扱いになるため、単純承認をしたと判断される場合があります。

ただし、管理者から一方的に解約された場合には相続人の意思による行為とみなされず、単純承認にはあたりません。もし、自ら解約したい場合には、相続放棄を検討していない他の相続人が解約を行うようにしましょう。

空き家の処分

空き家の処分についても、相続放棄を検討している場合には控えるのが無難です。空き家を売却したり解体したりしてしまうと、故人の財産を処分したとみなされ単純承認したとされる場合があります。

ただし、処分ではなく保存行為とみなされれば単純承認したことにはならないため、相続放棄をすることができます。現状維持に必要な行為であれば保存行為とみなされるため、空き家の補修等は問題ない場合が多いです。ただし、大きな改修等は処分行為に当たってしまう可能性もあるため、補修を行う前に事前に専門の業者に確認するのがよいでしょう。

内部リンク:遺品の片付けはどうやる?作業の進め方や注意点を解説します!

相続放棄でも遺品整理が必要になるケース

相続放棄をしたい場合でも、特定の事情がある場合には遺品整理や特殊清掃が必要になることもあります。ここからは、相続放棄を検討している場合でも遺品整理が必要になるケースについてご紹介します。

故人が孤独死だった場合

故人が孤独死だった場合は、相続放棄を検討している場合でも遺品整理が必要になるケースが多いです。孤独死の場合、ご遺体の発見が遅れてしまうと腐敗が進んでしまうため、現場の特殊清掃が必要になります。

死亡から時間が経過するにつれて現場の汚れや臭いは悪化していくため、近隣住民への被害を抑えるためにも、早急に特殊清掃を行う必要があるでしょう。

故人が賃貸住宅に住んでいた場合

故人が賃貸住宅に住んでいた場合でも遺品整理が必要になるケースがあります。賃貸物件で遺品整理を行う場合は、連帯保証人にその責任が問われます。仮に相続人が連帯保証人になっていた場合には、その相続人が相続放棄を検討している場合でも遺品整理を行わざるを得ない状況になります。

もし相続放棄を検討している状態で連帯保証人になる可能性がある場合、相続放棄が行えなくなる可能性があることを念頭に置いたうえで判断しましょう。

財産の管理義務がある場合

財産の管理義務がある場合にも、遺品整理をする必要があります。先述の通り、相続放棄をした場合でも、他の相続人に管理義務が渡っていない場合には、財産の管理義務が残ってしまう場合があります。

この状態でトラブルや管理者からの要望が発生した場合には、管理義務を有する人が適切な対応を行う必要があります。遺品整理に加え、清掃や空き家の修繕等を行うべき場合もあるため注意が必要です。

内部リンク:親族の死後の遺品整理はどう進める?孤独死後のケースもあわせて解説!

相続放棄後に遺品整理をする際の注意点

遺品整理の風景

ここからは、相続放棄後に遺品整理をする際の注意点をご紹介します。相続放棄をした後にやむを得ない理由で遺品整理をする際には、以下の点に注意して行いましょう。

相続財産から債務の返済を行わない

遺品整理をする際に、相続財産からの返済は行わないようにしましょう。相続財産から借金の返済を行ってしまうと、相続財産を処分したと判断されて単純承認とみなされ、相続放棄が認められなくなってしまう場合があります。

預貯金を引き出しての返済はもちろん、遺品を売却して支払いを行うことについても財産の処分にあたるため控えましょう。相続放棄を検討中に返済すべき債務がある場合には、故人の財産からではなく自身や遺族の財産から支払いを行うことをおすすめします。

形見分けは遺品の資産価値を確認してから行う

相続放棄後に形見分けを行う際には、遺品の資産価値を確認してから行いましょう。この場合も、遺品に資産的な価値があるかが財産の処分に当たるかどうかの基準になります。

もし資産価値のある遺品を形見分けしてしまった場合は、財産の処分を行ったと判断されて相続放棄ができなくなる可能性があります。形見分けを行う場合には手紙や写真といった資産価値がないものに限定して行い、他の遺品を形見分けしたい場合には専門業者に判断してもらうのがよいでしょう。

トラブル回避には遺品整理業者の利用も便利

遺品整理でのトラブルを未然に防ぎたい場合には、遺品整理業者の利用もおすすめです。ここまで解説してきたように、相続放棄と同時に行う遺品整理は小さなミスから相続放棄ができなくなってしまうリスクがつきまといます。

そのため、万が一相続放棄ができなくなってしまうリスクを抑えるためにも、遺品整理の専門家に相談しつつの遺品整理も検討してみましょう。

内部リンク:遺品整理を依頼する際の相場は?費用を抑えるためのポイントも解説します!

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相続放棄検討中の遺品整理は細心の注意を払って行おう

今回は相続放棄を検討している場合の遺品整理についてどう対応すべきか解説しました。遺品整理では遺品を処分する事が多いため、単純承認をしたと判断されるリスクも高い行為です。やむを得ない理由で遺品整理を行う場合には、財産の処分行為にあたる作業は避け、修理や修繕といった保存行為にとどめるのが無難です。自己判断で行うと相続放棄ができなくなってしまうリスクも高いため、事前に専門家に相談のうえ遺品整理を行いましょう。