2024年05月28日 / 2024年05月28日 更新

体が元気なうちに家財の整理を行う老前整理。早めにやっておくべきだと思ってはいるものの何から始めて良いか分からない、という方も少なくないでしょう。

そこで本記事では、老前整理を行うメリットや作業の進め方をご紹介します。整理に際してのポイントや注意点も解説しますので、老前整理を検討している方は、作業に着手する前にぜひご一読ください。

老前整理とは

老前整理とは、自身が老いを迎える前の元気なうちに、周囲の物事を整理することを指します。老前整理の主旨は、老後を安心して過ごせるよう体が元気なうちに準備をするという点にあります。身の回りの物の整理に加え、資産や相続に関する事柄の整理も行えば、より老後の安心につながることでしょう。

生前整理との違い

老前整理と似た言葉としてまず挙げられるのは、生前整理です。老前整理と生前整理では、それぞれ目的が異なります。老前整理が自身の老後のために行う作業であるのに対し、生前整理は自身が亡くなった後や遺族のことを考えて行う作業です。

そのため、遺言書や相続の準備などは、老前整理よりも本格的に行う必要があるでしょう。ただし、生前整理も老後の安心につながる点では変わりません。できる限り早い段階から着手することが、家族や自身の安心につながるはずです。

遺品整理との違い

遺品整理も老前整理と混同しやすい言葉です。老前整理と遺品整理の大きな違いは、本人が立ち会えるか否かという点です。遺品整理はその名の通り、亡くなった方の遺品を遺族が整理する作業です。そのため、遺品の持ち主は立ち会うことができず、自分の意見や思いを伝えることができません。

遺族が判断しなければならない事柄も多く、老前整理や生前整理と比較して親族の負担は大きくなりがちです。自身が元気なうちに、老前整理をして物や情報の整理を進めておくことで、親族が遺品整理を行う際の負担を軽減できます。

内部リンク:遺品整理とは?着手する際の注意点や業者の利用についてご紹介します!

老前整理のメリット

続いて、老前整理を行うメリットをより詳細に解説します。メリットを知ることで老前整理への理解が深まり、その必要性も実感できるでしょう。

元気な体で整理に臨める

老前整理のメリットとしてまず挙げられるのは、元気な体で整理に臨めることです。身の回りの整理では、物を運搬する機会が多く作業は長時間に及ぶため、ご高齢の方にとっては大きな負担になってしまいます。

早めに老前整理を行うことは、作業中のけがの防止につながるだけでなく、将来的な体の負担を抑えることにもつながり、精神的な安心感も得られるでしょう。

時間に追われず整理できる

時間に追われず整理できる点も、老前整理のメリットです。身の回りの整理は、想像以上に時間がかかるものです。時間に追われる状況で整理をすると、貴重品を誤って捨ててしまう、親族間で十分な相談をせずに物事を決める、といったトラブルも発生しやすくなります。焦りからくるトラブルを防ぐためにも、老前整理には時間的な余裕を持って着手しましょう。

快適な老後の準備ができる

自身の快適な老後の準備につながる点も、老前整理の見逃せないメリットです。老前整理で物を片付けることで、快適で過ごしやすい居住空間を作れます。部屋に物が多いと、けがをしたり物を紛失したりする可能性も高まるため、より安心感のある住まいを作るためには、物の整理は欠かせません。

また老前整理は、老後をどのように過ごすか考え直す機会にもなります。老後は、現役で仕事をしている時期とは大きく異なる生活になるでしょう。たっぷりある余暇時間をどのように過ごすか、老前整理で十分に検討しておくことをおすすめします。

資産や相続関連の確認ができる

老前整理のメリットとして、資産や相続関連の確認ができる点も見逃せません。相続関連の事柄は、自身が高齢になって初めて考えるケースも少なくありません。しかし、老後はいつけがや病気で体調の変化が訪れるかわからないものです。

老前整理で少しでも情報の整理や共有をしておくことで、親族も安心して相続の準備を進めることができ、将来の漠然とした不安を解消することにもつながるでしょう。

遺族の負担を軽減できる

先述の通り、遺族の負担を軽減できる点も老前整理のメリットです。自身の死後、遺族は遺品整理を行うことになります。遺品整理は、故人の遺品を取り扱うという性質上、心身ともに負担の大きい作業です。

また、本人に相談できないことによる状況確認や遺族間での話し合いには、長い時間を要することでしょう。老前整理を進めておけば、遺品整理の負担を大きく削減できます。資産や相続に関する事項を遺言書やエンディングノートにまとめておけば、より安心です。

内部リンク:親族の死後の遺品整理はどう進める?孤独死後のケースもあわせて解説!

老前整理を行う時期

老前整理を行う時期としては、40代・50代がおすすめです。先述の通り老前整理のメリットは、体が元気なうちに老後の準備ができることにあります。60代・70代から着手しようと考えていると、突然体調を崩してしまう可能性は、どんどん上がっていくでしょう。

また老前整理は、定年を迎える前に着手することも大切です。定年を迎えると精神的にも一段落するため、老前整理になかなか着手できないということも少なくありません。定年後の生活をスムーズに始めるためにも、50代までには老前整理を少しずつ着手しておきましょう。

内部リンク:生前整理とは?行うメリットやタイミング、具体的な方法を解説します!

老前整理で物の整理を行う手順

老前整理を始めようと考えているものの、何から始めてよいか迷ってしまうこともあるかと思います。ここでは、老前整理で物の整理を行う手順をご紹介します。

物の仕分けを行う

老前整理では、最初に物の仕分けを行いましょう。「貴重品」「必要なもの」「不要なもの」「保留」のように、いくつかの括りを用意して分類していきます。資産的な価値が高い物や重要書類は、誤って捨ててしまわないよう最初に貴重品として分類し、その他はできるだけ迷わず分類していくことが大切です。

片付けの最中に必要か不要かを一つ一つ精査すると時間がかかりすぎてしまうため、悩んだら一旦「保留」に分類しましょう。片付けがひと段落してから「保留」に分類したものを精査していくのがおすすめです。

不要な物を処分する

物の仕分けが完了したら、不要だと判断した物の処分を行います。ごみとして捨てるだけでなく、買取サービスを利用したり、知人に寄付をしたりするのも選択肢となるため、適切な処分方法を選択することが大切です。ごみとして捨てる物の量が多い場合には、不用品回収業者の利用も検討するのが良いでしょう。

エンディングノートなどに記録する

老前整理が完了したら、整理した事柄をエンディングノートなどに記録することをおすすめします。エンディングノートは、自身の資産や契約情報、親族へのメッセージなどを、自身が亡くなったときに備えて記しておくためのノートです。

老前整理で把握した事柄を記しておくことで、親族との情報共有がより簡単に行えるようになります。似たようなものとして遺言書がありますが、情報をまとめる際には、気軽に記載・書き換えができるエンディングノートがおすすめです。

ただし、遺言書とは異なりエンディングノートに法的な拘束力はないため、最終的な相続の決定事項を記したい場合には、遺言書を用意しましょう。

内部リンク:遺品整理を自分で完了するには?手順や注意点を解説!

老前整理で不要と判断した物の処分方法

ここでは、不要と判断した物の処分方法をより詳しく紹介します。老前整理で出てきた家財に合わせて、適切な方法で処分を行いましょう。

粗大ごみとして回収してもらう

ごみとして捨てる物については、ルールを確認した上で廃棄を行います。ゴミを出すときには、各自治体のルールに従う必要があるため、自治体のホームページや相談窓口で地域のルールを忘れずに確認しましょう。

廃棄方法が分からなかったり、廃棄する物の量が多かったりする場合には、不用品回収業者に依頼することを検討すると良いでしょう。

買い取りを依頼する

老前整理で自身にとっては不要と判断した物でも、必要とする人に買い取ってもらえる物は存在します。リサイクルショップなどの店舗に持ち込む他、ネットオークションやフリマアプリで出品することも可能です。

ただし、骨董品やコレクター品など専門家の鑑定が必要になる物については、正確な価格を知るためにも、それぞれの買取専門店に依頼するのが無難です。値段がつかないものや、買い取りができない物については、知人や団体などに寄付をすることも選択肢に入るでしょう。

リサイクル家電は特別な対応が必要

不要と判断した物の中にリサイクル家電がある場合には、他の物とは異なる特別な対応が必要です。リサイクル家電とは、エアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機のことを指し、これらの家電を処分するには別途料金が必要になります。

処分する際の方法としては、自治体指定の家電量販店などでの引き取りサービスや指定引取場所に直接持ち込む等が挙げられます。

内部リンク:遺品回収とは?遺品整理と不用品回収どちらを利用すべき?

老前整理を行う際のポイント

老前整理は、負担の大きい作業であるため、作業のポイントを押さえつつ進めることが重要です。ここでは、老前整理を効率的に進めるためのポイントをご紹介します。

必要に応じて期限を決める

老前整理を行う際には、必要に応じて期限を設定しましょう。期限を設定しないとダラダラと作業を続けてしまうため、いつまでも整理が進まない、という事態が起こりやすくなります。

最終的な作業完了日だけでなく、日付ごとの目標を設定しておくのも効果的です。ただし、期限に追われず自分のペースで作業を進められる点も老前整理のメリットです。慌ただしくなっては本末転倒ですので、自身のペースや整理の目的に合わせた期限の設定を行いましょう。

完璧を目指さない

完璧を目指さないことも、老前整理を効率的に進めるためのポイントです。老前整理は、簡単に完了する作業ではない上に、一度完了しても定期的に着手すべき作業でもあります。

そのため、最初から完璧に終わらせることを目指すと作業量に圧倒され、そもそも作業に着手するのが難しい状況に陥りがちです。目標は小さく設けて、できそうなことから着手していく気持ちを持って老前整理に臨みましょう。

物はできるだけ処分する

整理した物をできるだけ処分するのも、老前整理におけるポイントです。捨てるか迷っている物は捨てるくらいの気持ちで作業を進めた方が、効果的な老前整理になります。

歳を重ねると物の処分も大変になっていくため、大型の家具を処分する場合には、早めに廃棄することをおすすめします。ただし、処分する前のチェックは忘れてはいけません。誤って貴重品を捨ててしまうというトラブルに発展しないよう、捨てる前に複数人でチェックしておくと良いでしょう。

内部リンク:遺品整理はいつから始める?計画に際してのポイントや注意点も解説!

老前整理を行う際の注意点

ここからは、老前整理を行う際の注意点をご紹介します。安全に老前整理を進めるためにも、着手する前に確認しておきましょう。

危険な作業を無理して行わない

老前整理を行う際は、危険な作業を無理して行わないよう注意しましょう。重い物の持ち運びをする際には、体力のある方にサポートをしてもらうことが大切です。家の構造上、階段の昇り降りが多い際などは特に注意が必要で、対応が難しいと感じた場合は、無理せず業者への依頼を検討しましょう。

整理するのは自分の物だけにとどめる

老前整理で整理するのは、自分の物だけにとどめましょう。一見不要な物も、親族にとっては必要な物だったということは少なくありません。親族の持ち物を処分したい場合には、独断で判断しないことが大切です。必ず確認をとってから、処分するか否かの最終決定を行いましょう。

内部リンク:遺品整理で捨ててはいけないものは?起こりがちなトラブルなどとあわせて解説!

早めの老前整理で安心して過ごせる老後を

今回は、老前整理を行うメリットや作業の進め方をご紹介しました。老前整理は、健やかな老後を過ごすための準備となることに加え、物や情報を整理することで親族の安心にもつながります。

老前整理は、体が元気な時期に進めておくべきものであるため、早め早めで進めておくことが大切です。定年を迎える前の40代・50代から老前整理に着手し、安心して暮らせる老後への準備を始めていきましょう。